Wired News - 100年ぶりに変わるか? 「キログラム」の定義 - : Hotwired
今のキログラムは、キログラム原器で定義されているが、これだとこいつに埃が乗っかると定義が変わる。
これは大問題なわけです。そう言った背景で物理量として定義できる尺度に置き換えようと言う動きだそうで。
数人の科学者による提案が通れば、約2.2ポンドの金属の塊である国際キログラム原器は、間もなく時代遅れになるだろう。
メートルを含む他の6種類の基本単位と同じく、キログラムの定義も、普遍定数に基づいた新しい定義へと移行される可能性がある。キログラムは長い間、国際キログラム原器の質量と同一であるとされてきた。
キログラムを物理的なモデルで定義することから、相応する定数に切り替えようという作業は、およそ25年間にわたって行なわれている。2月28日に発表される論文では、アボガドロ定数とプランク定数という有名な2つの普遍定数のいずれかの値を定めることで、キログラムを再定義することが提案されている。前者は、質量数12の炭素0.012kgに含まれる原子の数を指し、後者は、量子――電磁エネルギーの最小単位――の大きさを説明するために使用されている。
1889年に開催された第1回『国際度量衡総会』で、白金・イリジウム合金の円柱が、キログラムを定義する国際基準であると宣言された。この円柱はフランスの国際度量衡局(BIPM)に保管され、数個の複製が世界各国に配られている。
オリジナルの国際キログラム原器は清掃のために数回移動されただけだが、空気中の埃などが堆積している可能性がある。時間の経過とともに、数個の複製の質量がオリジナルに比べて徐々に増えてきていると、今回の論文の執筆者の1人で、米国立標準技術研究所(NIST)量子電気度量衡部門の研究物理学者、エドウィン・ウィリアム氏は指摘する。
科学者たちによると、オリジナルの円柱の質量が変化しているかどうかは不明だという。この物体こそが、他を計測するために使用されているためだ。やはりこれは懸念すべき問題となる。さらには、このオリジナルが自然災害などが原因で破壊される心配もある。
「そこで何らかの定義を行ない、物体ではなくこの情報のみでキログラムを構成できればというわけだ」と、NISTの物理学者であり、科学技術データ委員会(CODATA、本部パリ)の委員長も務めるピーター・モーア氏は話した。
モーア氏、ウィリアム氏のほか、共同で研究を行なったイアン・ミルズ氏、テリー・クイン氏、バリー・タイラー氏は、『キログラムの再定義:決定の機は熟した』(Redefinition of the Kilogram: A Decision Whose Time Has Come)と題した論文を執筆した。この論文は、2月中旬にロンドンで開催された『英国王立協会』の会合で最初に発表された。論文は、『メトロロジア』誌のウェブサイトで入手できる。
論文を執筆した科学者たちは、これらの提案のいずれかが、衡法と計量の科学である度量衡学のコミュニティーに支持されることを望んでいる。仮に受け入れられれば、提案した再定義のいずれかが2007年10月から有効になるだろうと、英レディング大学の化学分光学教授を務めるミルズ氏は述べた。
定義法が変われば、キログラムは、そのものが示されるのではなく、選ばれた定義済みの定数を使用した実験によって決まることになる。プランク定数に基づく定義であれば、ある周波数の一定数の光子が1キログラムに相当すると定められることになる。アボガドロ定数に基づく定義であれば、キログラムは、ある元素の一定数の原子と定められるだろう。
普遍定数を用いてキログラムを再定義することにより、国際キログラム原器のモデルに関して現在把握されている問題や、今後発生するであろう問題を防ぐ以外にも、さまざまなメリットがもたらされると科学者たちは考えている。
ミルズ氏によると、再定義を行なえば、他の計量や科学研究結果の精度が上がるはずだという。他の計量単位の多くが、7種類の基本単位に基づいているためだ。
「正確な計量は非常に重要だ……環境や医療、工学の用途では、計量を確実なものにする必要がある」とミルズ氏は述べ、例として薬剤量の測定を挙げた。
キログラムの精度を上げるために、プランク定数やアボガドロ定数に基づいて複数の科学者が実験的に導き出した値と比較した上で、今回の論文で発表された数値が浮かび上がったとミルズ氏は話した。これらの値は、2002年以降にCODATAに認定された直近のものだ。
この科学者グループの今回の論証は、キログラム定義における最終領域に到達するものなのだろうか?
モーア氏によると、そうではないようだ。技術が進歩すれば、新たな方法が開発され、人々は古い方法では十分でないことを認識するだろうという。
「さらに優れたさまざまな種類の計量法が出てくる」とモーア氏。
ミルズ氏の考えは少し異なる。提案した再定義のいずれかが選ばれれば、「それが結末ではないか――少なくとも100年間は。現在の方法は100年間続いたのだから」とミルズ氏は述べた。ただしその後すぐに「何が起こるかわからない」と付け加えた。
BIPMの質量関連量部門の責任者であるリチャード・デイビス氏と、今回の論文の執筆者の1人でBIPMの名誉局長であるクイン氏からは、コメントは得られなかった。
コメントする