中国の格差是正の処方箋は?

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中国はいけいけどんどんって感じですが、まるでバブル期の日本を見ているようです。
レストランとか高いことが全て、なんてのはそのまんまあてはまる。
その一方で地方疲弊しているわけですが、これは日本が儲かっていてそれ以外は、という構図と同じように写ります。
で、中国にはそんな構図が全部国内にまとまっているから恐ろしい。いくら押さえつけていてもそのうち住民が蜂起するんじゃないだろうか。そんなにおとなしい国民性を持っているとは思えないし。

 北京の街を歩いていると、真っ赤なフェラーリを見かけた。新聞スタンドで2.5元の新聞を買うのに10元札を渡しておつりはいらない、という若い男性がいた。1人分の食事予算が最低でも2000元といわれるレストランにいくと、「本日貸し切り」の札がかかっていた…。「なんか昔を思いだすね」と友達と顔を見合わせた。私たちはバブル絶頂期に青春を送った世代。日本人が、アメリカを買ってやる、と肩で風を切っていた時代。今の北京の空気のにおいとそっくりだ。
 1期目が終わった胡(こ)錦涛(きんとう)政権を振り返ると、中国のバブルはいずれ弾けるといわれながらも、国内総生産(GDP)は今年で5年連続の2けた成長が確実という快挙を成し遂げていた。中国の株式市場規模は香港を含めた時価総額ですでに日本を抜いて世界2位だ。年内にGDP規模もドイツを抜いて世界3位になるだろう。中国の社会・経済について厳しい見方をしばしば教示してくれる民間学者、仲大軍・北京大軍経済観察センター主任でさえ「温家宝首相の手腕は100点満点で70?80点」。
 だが「成長が大きいゆえ内包するリスクも大きい」(仲主任)。このリスクを乗り越える処方箋(せん)が、先日閉幕した第17回共産党大会で打ち出されただろうか。
 仲主任によれば、内包するリスクとは資産価値の急激な上昇、という。米誌フォーブス(アジア版)が選ぶ中国長者番付1位は広東省の不動産王の父親から財産を譲渡された26歳の娘だが、その資産総額は父親の代では12億元。娘に譲られたあとの1年で100倍以上の1300億元にふくらんだ。うら若き女性が月探査衛星を90個以上打ち上げられるだけの資産を独り占めしている。資産価値上昇による富裕化は資産を持つ者の豊かさを約束するが、持たないものとの格差拡大をも助長する。
 背景には経済が急激に国際化する一方で、封建時代さながらの搾取構造を持つ政治・社会システムで労働力価格と人民元が低く抑えられてきた結果、海外の投機的な資金流入などで市場の過剰流動性(カネ余り現象)が発生したことがある。日系金融筋に言わせると、この過剰流動性を吸収するには人民元を上昇させるのがてっとりばやい。
 第17回党大会で、周(しゅう)小川(しょうせん)・中国人民銀行総裁は「現状ではある程度、元高が進む」と述べ、実際、党大会後に1ドル=7.5元のラインを突破させ元高を誘導したのも、そのあたりを承知してのことだろう。しかし、中国の場合5?10%の人民元上昇が都市に3 50万人、農村に1000万人の失業者を生むという労働社会保障省の試算もある。結局、リスクは貧困層にしわ寄せられ、社会不安につながる。
 党大会で打ち出された「科学的発展観」はこんな格差の是正に有効なのか。それっぽくは聞こえるが、結局は共産党の特権を維持したまま改革開放を進めるという●(=登におおざと)(とう)小平(しょうへい)氏の引いたレールの上を走ることに変わりはない。江沢民(こうたくみん)氏の「3つの代表」論との違いは、時速1 00キロか70キロか程度の差で、若干の時差はあれど終着駅で待ち受けるのは矛盾と混沌(こんとん)ではないだろうか。
 「5年前もバブル、バブルといわれたけれど、株も不動産も上がりつづけた。バブルなんて外国人のやっかみ半分の批判だ」とある不動産業者は言う。好景気にわく今の状況では当局者がいくらリスクを警告しても痛みを知らぬ人々は馬耳東風だ。名宰相の優れたかじ取りのせいで、人々はひょっとしたら傷が浅いうちに痛みを学び、軌道修正するチャンスを逸したのかもしれない。胡政権2期目スタートを、そんな不安をもって私は迎えた。
(中国総局 福島香織)

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このページは、masashiが2007年10月28日 08:23に書いたブログ記事です。

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